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自分らしく社会に貢献する生き方働き方
「あなたの志は何でしょうか?」
「この社会を少しでもより良くするために、あなたの命を懸けてやるべきことは何でしょうか?」
この問いにシンプルに答えるのは、なかなか難しいかもしれません。
会社や社会から求められることに対応してばかりしていると、心をなくしてしまいますし、
自分のやりたいことや好きなことだけを追い求めていても、独りよがりで終わってしまいます。
自分らしさを最大限に生かしつつ、社会に役立つ生き方働き方は、どのようにしたら実現できるのでしょうか。
私は、AIの活用が進む今の時代だからこそ、人間各々が本来もっている才能を開花していく必要があると感じておりますし、
それぞれの人が生まれ持った使命(志)を見出す必要があると思っています。
今回のプレゼンテーションを通して、あなたにしか出来ない新しい生き方働き方を見つけるためのヒントを得ていただければ幸いです。
田中勇一 TANAKA YUICHI
社会起業大学 学長
自分らしく社会に貢献する生き方働き方
皆さん、こんにちは。いまご紹介にあずかりました社会起業大学・学長の田中と申します。よろしくお願いします。
まず初めに、今日秋山さんはじめMED Japanの皆さんに、このように貴重な機会をいただきましたこと、感謝を申しあげます。どうもありがとうございました。
「命の場から社会を良くする」。この理念、すばらしい。この場を私は命を語る場だと思ってまいりましたので、普段自分がしゃべっていない話というか、ほんとうに自分が何を目指していまこの社会企業大学をやったのか、そういったことをここでお話できたらと思ってまいりました。少しでも皆さんのお役に立つ話ができればと思いますので、よろしくお願いします。
最初に、これは社会起業家の話をするときに、必ず私が出させていただく言葉でございます。“Be the change that you wish to see in the world.”(M.ガンジー)「あなたがなりたい変化に、あなたが求めているものに、まずあなたがなりなさい」。どうしても社会起業、社会を良くしたいと思う人たちは、地方を変えるとか、途上国の子供たちに教育を与えるとか、そうやってこう、何かを変えようとする動きがあるのですが「何かを変える前に、まず変わるのは自分でしょう」という言葉なのですね。
例えば、地域活性のお仕事に関わらせていただくと「その地域がもったいないから、もっと良くしよう」と思って、頑張っている人はたくさんいます。いま、お金がたくさん集まって元気になっています。だけど、なかなか変わらない。お金がなくなった瞬間に、みんないなくなっちゃって。(苦笑)なかなか、日本の地域は元気にならない。
でも、地域が元気になるのはどういうときか。やはり、ほんとうにその地域のことを愛して、この地域のすばらしさを知っていて、何とかそれをみんなに知ってほしい、この地域を残したい、と本気になって思っている人。そういう方がいると、その地域は変わっていくのですね。
だから、何より大事なことは「自分から変わること」。これが、この言葉が教えてくださっています。これが、社会起業家の本質だと思って毎回僕は話をさせていただいております。
もう一つ、重要な言葉「使命」。命の現場に向き合っている皆さんと、今日お話するのを楽しみに来たのですが、どうでしょう。自分として「もう使命を持ってやっているぞ」と思っている方、いかがでしょう。(挙手による回答を待つ間)ああ、すばらしい。やはりここですね。半分以上おられると、なかなか私もこの話をして(●●●)ですが、すばらしい場ができて、ほんとうに感謝申しあげます。
これは、今日講演くださる田坂先生から教えていただきました。「使命とは、命を使うことだよ」と。自分が命を使って何をやるべきか、何をすべきか。その問いに答えようとしたときに、きっとお金もうけだけ考えないですよね。お金もうけのために、命を使うようにはならないし。
何でしょう、つまらない権力闘争やりますかね。やはり自分の命を使おうと思ったら、ほんとうに自分がやりたいこと、人生をかけて成し遂げたいこと、もしくは家族・親友・自分にとってほんとうに大事な人を助ける。子孫・子供のために社会を良くする、そのために命を使おう。そう思うと思うのです。
だから、僕はこの「使命」という言葉をいちばん強く胸に刻みました。「そうか、みんなが命のことをきちんと使えば、この世の中がハッピーになるんだ」と思ったのです。
でも、どうしていまそうなっていないのでしょうか。実は、私は銀行出身なのですが。(苦笑)もしかしたらまだまだお金ばかり追っている、というかそのような世の中になってしまっています。
せんえつながら、何がいま起こっているのかについて、自分なりにまとめてみました。スライドには「インターネットが生き方を変える」と書いています。この(スライドに記されている文字)「B.I.」「A.I.」の、「A.I.」はartificial intelligenceというつづりの人口知能ではなく、after internet。(苦笑)before internetとafter internetです。たしか1995年だったと思います。
ここからある意味で、2千年単位の世の中の変化が起こっていると思います。いわゆる「A.C.」「B.C.」に重ねて、こう書いてみました。どれだけインターネットが世の中を変えたか、ということを言いたくてこれを出しました。
「B.I.」の時代についてはいろいろな言い方があるので、皆さんは幅広いお考えがあると思います。私は一応、「同質安心時代」もしくは「機械化」というふうに言っています。つまり、みんな同じことをやって満足する。例えば、ヒットチャートを見てナンバーワンの曲をみんなが聞いている、みんなが着ているブランドを着てみんなで安心する、東京に来たらみんなが集まって、みんなここでやっている。要するに、みんなが集まって同じことをやる、ということで安心していた。だから大きな組織は強かったし、みんなその権力を得てやってこう、という感じです。
政治の動きやいろいろな社会の動きを見ていても、いまだにこの時代を前提にやっているのではないか、と思う事件がたくさんあります。スポーツの世界や、もしかしたら古い組織もそうなっている。
しかし「A.I.」の時代は、皆さんがもうお気づきのとおり「生命の時代」であり「個性が輝く時代」です。一人ひとりがどのようにして自分の命を輝かせるのか、という時代になったのですね。
だから、私はそれをサポートする、それが自分の使命だと思ってやっているのです。そのために、どうしたらいいのか。
15年前、社会起業大学というか会社に「Re SOUL」という名前をつけました。それはなぜか。皆さんの「ソウル・魂」には、それぞれ必ず使命があるはずです。だから、その使命を思い出してください、という意味でつけたのですね。
皆さんには、必ずこの世の中でやるべきことがある、自分の命をかけてやるべきことがある。これが私の信念です。だから、それを皆さんに気づいてもらう・見つけてもらうために、いま頑張っています。
言い方を変えると「ほんとうの自分に戻る」。本来、皆さんはすばらしい才能をお持ちです。どの人も、どんな人も。ですから、いままでつけてきた衣を脱いで、ほんとうの自分になる。そうなっていただければ、この世の中でほんとうにみんなハッピーに生きていけるし、社会自体がハッピーになる。私はそう信じて、実際にずっとやってきています。
そうは言っても「田中さんが言っていることは、頭では分かる。ではどうやったらほんとうの自分になるの」という話は絶対にあるのですね。
これ(スライドの図)は有名な「ノミの実験」です。ご存じの方も多いと思いますが、本来ノミは1メートル以上飛べます。しかし、この(スライドの図)50センチの箱の中に3日間入れておくと、最初はぶつかっているのですが、3日後に箱を外すと50センチしか飛べなくなっている。
皆さんにとっての「箱」は何でしょうか。例えば、子供のときはどうだったでしょう。私もけっこう好奇心旺盛でしたので、大人にいろいろなことを聞きました。「なんで人は死ぬのか。なんで人はうそをつくのか」すると「おまえ何言ってんだ、勇一。そんなこと聞かなくていいから、あんた先生の言うこと聞いときなさい」というふうに。(苦笑)
どうでしょう。皆さんにもそれぞれ好きなこと・やりたいことなど、たくさんあったのではないでしょうか。けれども、周りの人たちや社会とはズレてしまう。人とズレたことをやってはだめだと。つまり「みんな先生の言われたとおり、会社の言われたとおりにやりなさい」ということで、それに沿ってやってきていますよね。
すると、いつの間にか自分の中で「箱」に慣れてしまったというか。ほんとうは、心の中でいろいろとやりたいことがあったはずです。ほんとうは誰かを助けたかったとか、何かほんとうにやりたいことが。だけど、それをがまんせざるを得なかった、という環境にいる。
それによって、皆さんは何になったかというと、機械のように同じような人が出てきた。ですから、ほんとうの自分になるためにまず皆さんが気づくべきことは、自分に「箱」を置いているのではないかということ。つまり、皆さんが持っている可能性を自分で勝手に抑えているのではないか、ということ。
だからもう諦めるのは、やめたいのですね。装うのは、やめましょう。皆さんがそれぞれに持っているもの、それを出していくということです。ですから、やることがシンプルです。今日ここで言った「魂」と「命」は同じだと思います。魂の声に従って動くこと、魂の喜ぶことをすること。自分にとって何をやったら喜ぶのか。心から湧いていることが、ここにお越しの皆さんには必ずあると思います。そして、それに従って動いている。
その一つの事例として、少し恥ずかしいのですが、せっかくですので自分のこともお話させていただきます。
いまスライドに半沢直樹の写真を出していますが、なぜ出したかというと、実は私は半沢直樹と同期なのです。と言うと皆さんは「えっ」と思いますよね。彼は1992年で、私も同年に銀行に入った人間です。ちょうどバブルが終わったあとの話で。いまだに、嫁と一緒にこれを見ています。当時の銀行でのいろいろな思いが出てくるのですね、見ていると。(苦笑)
もともと銀行員でした。そのときに「銀行の仕事、ほんとつまんないな」と思ってやっていましたが、「やはりどうしても海外に行きたい」というのがあり、頑張っていると行かせてくれることになり、留学させてもらいました。もっと優秀な人間がたくさんあった。
その海外にいるときにこんなことが起こりました。皆さんご存じと思いますが、山一證券という四つあった大きな証券会社のうちの一つがつぶれたのです。実は、このとき銀行もいくつかつぶれました。そのとき、私はアメリカにいました。もちろん、私も銀行から来ていたので不安になり、大丈夫かと会社に電話しました。すると「いやあ、何言ってるのおまえ、全然大丈夫だよ」というのんきな声が返ってきたわけです。
僕はその同僚の声を信じたので「そうなんだ、アメリカでけっこう騒がれているのに、日本ではこんなに大丈夫だったんだ」と、思っていました。しかしその一方で、2年ほど後にアメリカにいたその銀行の先輩に聞いたところ、「いやあ田中君、実はうちの銀行危なかったんだよ」と言われて、僕はびっくりしました。
そのときから「えっ、なんだろう。アメリカと日本て、こんなにきている情報が違うの」と「これはおかしいな」と思うようになりました。それで「もしかしたら、これはけっこう情報格差があるのではないか」と気づきまして。
銀行に帰ったあと、ではその情報を扱う仕事とは何だろうと思って伝えると、マーケットの仕事だということでした。それで、実は無理を言って銀行でマーケットの仕事をさせてもらいました。マーケットの仕事をしていると、何億という運用をさせてもらえるのですね。僕の指が動くと、20億くらいポンと動いたり。
お金の動きというのは非常におもしろかったのですが、見ていると「そうか、これは持っている人がどんどん豊かになっていくんだ」という状況に気づいてきました。これは絶対にいけないと思って。
すみません、話が長くて少し時間がなくなりました。
それで政治家を目指しました。しかし、目指したものの何というか、なかなか尊敬できる政治家がいなかったのですね。そこで「どうしよう、政治家でも変えられないな」と思案しているときに気づいたことは。「そうか、政治家を選んだのは自分たちだ。だから自分たちが持っている力を呼び覚まして、考える力と実力を手にするしかない」ということ。
だから、自分は教育の業界にいって一人ひとりにこれを気づいてもらうのだ、とほんとうに思って。周り全員反対して、嫁さんも反対でしたが。(苦笑)教育業界にいって、そこから起業して銀行を二つ作りました。
そして「いや、おまえそう言えば、自立をさせるためにやったんだろ」ということで、社会企業大学を作ってここに至るのですね。私自身もまた、自分の魂の声に導かれてここにまいりました。ジャック・スパロウのように、魂の声・心の声に従っていると苦労ばかりします。ですがもう、苦労ウエルカムでいいじゃないですか。
最後に「Time is money. Time is“SOUL”」、魂の声に従って動く。やはり、自分の時間をどう使うかということです。皆さんが熱心に聞いてくださったおかげで、少し話しすぎて時間がなくなりましたが、貴重な機会をいただきまして、どうもありがとうございました。また、よろしくお願いします。
【テキスト化】Y.C