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未来の豊かさを創っていくための社会処方箋
例えば、急に仕事がなくなったり、 急に病気になって外に出られなくなったら、 例えば孤立したら。 私たちが、今は起こっていないかもしれないことも、明日起こるかもしれないこと。 精神科を経て、児童精神科として臨床に携わる中で、関係性、経済的、健康、様々な格差の中で生き抜いている人たちに出会いました。 その方たちの物語を聞く中で、それは他人事ではなく、誰にも起こりうることなのではないかと感じてきました。 同時に、誰もに、コンタクトパーソンのような、安心と信頼とネットワークがある他者との関係があるというのがインフラになっていくこと、 そのインフラの上に新しい社会の処方箋を作っていくことが、これからのメンタルヘルスケアに必要なのではないか、 そして、何かがあっても何とかなるこれからの豊かさの基盤につながるのではないかと感じ、今の活動に至っています。 関係性の格差、つまり孤立は健康格差にもつながり、虐待の体験はその後の人生に影響を及ぼす。一つ一つの課題は、切り離すことができない、 複雑に絡み合った課題です。そして、その課題や社会の歪みにより、真っ先に困難に陥りやすいのは、 実は、こどもだったり、 弱者と言われている方である可能性があります。 困難は、目に見える困難さだけではありません。心の傷であったり、そのことを誰にも理解されず、尊厳を奪われていく中での絶望であったり、 それを誰にも話せずに生き抜いている力とともにある、孤独感だったり。 私たちは誰もが弱さを持っていて、それを前提にした社会を作れる強さも持っているのではないかと思います。 誰もが、弱さを持っていると考えた時、今弱者と言われている方々を、支援するという視点だけでなく、 その方からの物語に耳を傾け、そこから見えて来る社会の構造的課題と、今の社会にある健康的な資源や可能性とを組み合わせて、 多分野の人(医療福祉教育分野の人だけでなく、現場の人、子供若者、多分野の専門家や、研究者、企業、アーティスト、デザイナー、エンジニアさんたち)とともに、 これからの未来に必要な、地球の幸せと継続性を、そして、人の幸せを作っていくような新しい処方箋を一緒に作っていけたらと思っています。
小澤いぶき
NPO法人PIECES 東京大学先端科学技術研究センター