緒方哲才: 人生で大事なことは、だいたい偶然が決める!

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人生で大事なことは、だいたい偶然が決める!

端的に言えば、「かなり風変わりな薬剤師の経歴」であり、こう言う道もあり得ると言う点で、後続の方々に勇気を与えられれば幸いです。
薬学部卒業後、国家資格を取りました。修士了の後、大手総合商社に入り、24年余り働きました。商社では、通常業務の傍ら、8年強に亘り、管理薬剤師としての業務も行なっています。また、イタリアに6年半、ブラジルに3年の海外駐在の経験もあります。
思い出深いエピソードとしては、91年に、ペルーでコレラを初めとした感染症が大流行し、当時の厚労省の大臣官房室と共に、製薬会社に依頼して、抗菌剤や抗生物質を手配して、大統領宛に寄付し、対策の一端を担ったことが挙げられます。
営業職としては、長年に亘り、医薬品の受託製造に尽力しました。具体的には、海外および国内の大手製薬向けに抗HIV薬、糖尿病薬、抗潰瘍薬用途の原料、中間体の調達や、品質管理、製品の輸送を手がけ、関連の法務・税務や、登録関係、コンプライアンス対応に至るまで手掛けました。
商社を退職後は、一転して、某モーター会社の海外チーフパフォーマンスオフィサーとして財務管理を担当しました。その後、製薬会社に移り、受託製造等を管理運営した後、経営企画管掌の上席執行役員となりました。直近は介護会社で理事を務めた後、また新しい道を模索しています。さて、今度は何が起こるのか、自分でもワクワクしております。

緒方哲才  OGATA TESSAI

Ogata&Co. CEO&Founder

人生で大事なことは、だいたい偶然が決める!

よろしくお願いいたします。緒方哲才と申します。

まず、最初のスライドです。これ見たことあるっていうか、どこかってお分かりになる方いらっしゃいますか。

(スライドの文章)

“ Hope lies in dreams, in imagination and in the courage of those who dare to make dreams into reality. -Jonas Salk*-

(*ポリオワクチンを開発したアメリカの医学者)

これは、アメリカのサンディエゴ郊外にあるソーク研究所へ出張に行ったとき、最初に入ったところの床に刻まれている、結構有名な文章です。希望というのは、どこにあるのかと。夢である、それから想像力である。それから、その夢を現実のものにしようとする、そういう人の心の勇気の中にある、ということで好きな言葉です。

私の解釈として、いろいろなことの実現というのは、結構偶然が決めているのではないか、というふうに思っています。それで私の偶然というのは、どのようにして人生を決めてきたのか、というところなのですが。

今スライドに映っているのは、年表になります。現在55才なので、カラム(円柱状メモリ図の位置)の右から二つ目にいます。20代でまず仕事を始めたわけですが、浪人もしましたし大学院にも行ったので、人よりも4年くらい遅く始めています。

薬学部を卒業したのになぜだか総合商社へ行ったので、医薬品の受託製造や政府案件のドネーション(寄付・助成)などのこともやりました。それなりに楽しかったと思います。30代の半ばに海外駐在の機会を得まして、家族を伴いイタリアに駐在して6年おりました。このときも、日本向けの医薬品の受託製造の話をしていました。

一旦戻ってきて、今度は農薬の受託製造ということで、インドに頻繁に出張していました。このことが、あとで結構大きな意味を持ってきます。40代の後半は、また家族を伴ってブラジルに3年駐在しました。最初の会社を50才で辞めまして、そのあと全く違うモーターの財務の仕事ということで、今度は米国に1年駐在しました。先ほどのインドと同じく、インド・米国でなかなか……、事件がありました。

52才で転職をし、今度は製薬会社に務めまして、医薬?ジュシンナイセイホショウ(注:不明瞭の部分です)と経営企画の責任者になって、今年の5月に独立し自分で会社を始めた、ということで。自分なりに人生いろいろなことがあるな、と思ってワクワクしています。ひとことで言うと、波乱万丈ということで。

今ちょうど「ホテル・ムンバイ」という映画をやっていますけれど、いつもお客さんと一緒に出張しているときに、たまたまプレゼンが間に合わないということでキャンセルになりまして。珍しくちょっと朝寝をしていたら、家内に起こされて「大変だ、ムンバイが燃えてる」と。見たら、見覚えのある風景なのですね。

もしも出張でそこに行っていたとしたら、最初の夜にお客さんと食事をしているレストランが機銃掃射に合って、もう大変なことになっているということで。その出張に行っていたら、今こうやって皆さんの前でお話していることはまずないだろう、ということでした。現実に、日本人の方が一人お亡くなりになったりしていました。

これが1回目の危なかったときです。2回目はこの右上の(スライド写真)情けない顔なのですけれど、アメリカに駐在しているとき。アメリカは1年しか駐在しておらず、しかも休んだのは5日間だけです。上(の写真)がDR(バリウム造影剤X線検査)をやったとき、下(の写真)がカテーテル手術を受けたときで、不整脈が起きたのですが。この2枚の写真で象徴される5日間の休みで、なんと11万ドルも使うことになりまして。日本の皆保険のありがたさというのを、思い知った5日間でした。

結局、そういう私の欺罔(きもう)な人生に付き合わされて、かわいそうだったのは家族。この(スライド)真ん中の写真の右側が息子で、左が家族の写真なのですけれど。息子は、高校までに学校を6校転校しまして。家内もブラジルに行ったとき、経済は伸びていたのですが危なかったので、多分いまだに恨まれていると思います。家族円満のありがたさというのは、家内に言ったら多分ちょっと怒ると思います。

それでも懲(こ)りずに、今年また自分で仕事を始めるようになり、新たに経験したことが、この4つになります。介護外国人材の調達調剤実習イタリアのスタートアップ企業との対話です。こういった出会いの偶然を生かすのも、やはりコミュニケーションを重要視していくことだと思っています。

介護研修に関して今までとまったく違うのは、聞く相手が居住者、ないしは施設に住んでいらっしゃる方であること。認知症を患っているとか、どんどん認知症が重くなっていくという方なので、ロジカル(論理的)に話を聞くのではなく、とにかく聞くのだというところです。

この中で排泄のにおいとかそういうことに得意な方って、いらっしゃらないと思うのですが、その排泄と向き合えるかということ。それに伴う外国人材の調達では、日本語が達者であるというところに、どうしてもフォーカス(焦点を当てる)してしまいます。けれども、実際は宗教観であるとか、文化の違いであるとか、そこにちゃんと理解がある人・適応できる人を採用しなければいけないのだ、ということを思い知りました。

そのほか、あとでちょっと詳しくやりますが、カメラとAPP(電子端末のアプリケーション)のシステムについて。例えば居住者の?トコロデスル(注:不明瞭な部分です)とか、施設としては介護保険外のビジネスをどうやって増やしていくのか、というのが重要な点になってきます。

それから外国人材の調達。これ(スライドの写真)はインドネシアで、実際に行ってみると、彼我(ひが)(相手と自分)の差というのは、いちばん大きいのが人口構成の違いです。皆さんご存じのとおり、日本は65才以上の人口が28.4%、あと数年で3割になるというところです。労働人口で言うと、インドネシアにおいては、日本の人口のほぼ2倍の2億7千万人で、その65%が15才から64才の労働人口ということになります。一人頭のGDPで見ても、日本のまだ10分の1、3千9百?ホドなのですが、インドネシア自体で見ると、同じ30年間のスパン(時間的間隔)では8倍ぐらいに増えています。

そういう状況にも関わらず、なかなかインドネシアの人というのは、日本には入ってきていません。どういう背景かというと、95%以上の人がイスラム教なのですね。それで、お祈りの場所の確保であるとか食生活であるとか、そこのところを確保するのが難しい。それから先ほど申しあげた、やはりどうしても日本語のところで?ホカ(注:不明瞭な部分です)してしまう、というのがある。

そして薬剤師の研修というのが3つ目です。きっかけは、調剤薬局の経営がやりたいということなのですが、その中で、ほとんど初めて学ぶようなターミノロジー(特定分野の専門用語・学術用語)がありました。特に大事なのは双務(そうむ)(両者が互いに義務を追うこと)だなと思ったのですが、これは医師が持っていらっしゃる双務と、例えば調剤薬局が持っている双務というのが、全く関連していないのですね。それを本当は共通の箱に入れて、話をする・コミュニケーションをとるということがあると、全然違うのではないかというところで、そういう技術の適用が必要だと。

これ(スライドの写真)は、イタリアのスタートアップの企業と話をしたのですが、カメラを使ってデイリーケアをします。乳幼児ケアと老人ケアというのは、やはりほとんど同じで。こういうかたちでウオッチするのと、それから個人情報の保護と家族の同意が必要になる、というパーソナル(個人的)なことになってきます。こういう全体を見て、大事なのはやはり良い偶然を作り出すということじゃないかと。本人がいて周りに関係者がいます。ステークホルダー(利害関係者)と言ってもいいと思うのです。

医療費43兆円からかかって、ほとんど予防治療に移していく。実際は、薬価の消費税改定が今月行われましたし、来年通常改定があります。薬を出したりシステムを出したり、ということだけではなく、情報の共有というのがどんどん必要になっていくし、対応も必要になってくる。こういうのを一連のシステムで、インタラクション・プロパティ(相互作用の性質)として海外に持っていくということも、一つのビジネスだと思います。

そういうのをやっていくということが、やはりソーク博士(Jonas Salk)の希望が夢の中にあり、それから想像力の中にあり、現実のものとするということなのじゃないかな、というふうに思っています。たまたま昨日高校の同級生で、慈恵医大で今私の高血圧を診てくれているお医者さんと、それからシステム関係の友達と話をしたのですが、彼らもおもしろいねと言ってくれたので、今日のプレゼンを楽しみにしてくれているみたいです。以上です。

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【テキスト化】Y.C

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