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77年目の遺言
真夏の厚い雲に覆われた前橋上空。B-29爆撃機92機は一斉に弾倉を開いた。爆撃手は慎重に照準器を覗きながら投下レバーを倒した。
爆弾はスルスルと滑るように市街地へ吸い込まれていった。爆撃手の任務は終った。人がどこで、何人死のうが関係ない。ただ与えられた任務を遂行しているだけだ。
雲の下には多くの前橋市民がいた。恐怖におののきながら、じっと息をひそめ、死に神を追い払うよう神仏に祈った。
恐怖は現実へと変った。家々は焼き払われ、四散した肉体はコピーしたように壁にへばり付いた。
77年前の8月5日、人が焼かれ、骨が砕け散る地獄の惨状。
平和主義者のあなたへ。
平和って、いったい何ですか。
原田 恒弘 Tsunehiro HARADA
元あたご歴史資料館学芸員