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東日本大震災が私を変えた。
卒業後、私は勤務医として関東のクリニックで歯科治療に従事していた。特に、インプラント、審美歯科、歯科矯正に興味があり、とりわけその勉強ばかりしていた。2011年3月11日、私の運命を変える出来事が起こった。東日本大震災だ。日ごとに明らかになる震災の被害、「自分にできることはないだろうか?」という思いが強くなった。偶然か、友人から被災地での多職種医療ボランティアの募集があると連絡があった。 5月、はじめて訪れた気仙沼で見た光景は目を疑う物だった。道路の脇に積み上がる瓦礫、肥えた蠅が数多く飛び、異臭が鼻をついた。テレビの光景が目の前に広がり、現実を実感した。 気仙沼での医療ボランティアは多職種連携の活動で、多職種との関わりを通じて「自分が口しか見てこなかった」ことを痛感した。気仙沼での活動の中、小山珠美看護師との出会いもまた私を大きく変えた。「口から食べる」ことを学びたいと思い、小山看護師が在籍する東名厚木病院に勤務することを決意、気仙沼と神奈川県の厚木を2年間毎週往復した。 気仙沼では震災後からの継続した活動で「食べる」取り組みが浸透してきている。今、気仙沼市立本吉病院と山谷歯科医院に勤務し、病棟、外来、往診で「口から食べる」取り組みを行っている。私は生命の根幹である「食べる」ことをこれからも考え、守っていきたい。
一瀬浩隆
気仙沼市立本吉病院 山谷歯科医院