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“社会に適応する”という幻想をやめる̶ 精神科医が提案する“社会復帰の再定義”
精神科医として日々向き合っているのは、「社会に適応できなくなった人たち」です。しかし実際の診療で出会うのは、怠惰な人ではありません。むしろ、真面目で責任感が強く、周囲の期待に応えようと努力し続けてきた人たちです。彼らは限界まで適応し続け、ある日突然、会社に行けなくなる。「自分が弱かっただけです」と語る患者さんに接するたび、私はある違和感を抱くようになりました。本当に問題なのは個人の弱さなのでしょうか。それとも、「適応し続けること」を前提とした社会構造そのものに、無理があるのでしょうか。
現在の社会復帰支援は、「元の状態に戻すこと」を前提に設計されています。しかし現場では、復職後に再び不調をきたし、再休職を繰り返すケースも少なくありません。私はリワーク支援の現場を通じて、必要なのは単なる“適応”ではなく、人と社会との関係性を“再接続”する視点ではないかと考えるようになりました。
本講演では、「社会復帰」を“元に戻ること”としてではなく、その人の個性や生き方に合わせて、社会との接続を再設計するプロセスとして捉え直します。精神科医としての臨床経験とリワーク支援の実践をもとに、「適応」を前提とした社会から、多様な人が持続可能に参加できる社会への転換について考えます。
織田宗太郎
医療法人社団結糸会理事長 おりたメンタルクリニック院長


