近藤克則: 健康格差の縮小は可能か?〜20年かけてわかったこと

地域や社会経済状況の違いによる集団間の健康状態の差を健康格差と言う。平等神話が残っていた1999年にある町で調べると高所得層に比べ低所得層で5倍も要介護認定者が多かった。いという健康格差を、発見したときには驚いた。本当?メカニズムは?放っておいて良いの?どんな対策?効果はあるの?など、多くの疑問が湧いてきた。その答え探しを始めた。
答えが完全にわかるまで放置できないと思い、仮説や考えられる対策を「健康格差社会」(医学書院、2005)という本にまとめた。仲間と日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study,JAGES)を立ち上げ、30を超える市町村の10万人規模のデータベースを構築した。やはり全国のどこにでも健康格差はあった。しかし、一時点の横断データで、例えば、低所得と不健康に関連が見られても、どちらが原因か、わからない。だから、縦断追跡研究に展開し、低所得や社会的孤立が不健康よりも時間的に先行することを確認した。しかし、それらが原因らしいとわかっても、観察研究だけでは、意図的に変えられるかどうかはわからない。だから、数市町と一緒になって、交流拠点を作って追跡し、参加者で非参加者に比べ、要介護認定率が低いことを確認できた。
国も「通いの場」づくりによる介護予防が始めた。「健康日本21(第2次)」で10年かけて「健康格差の縮小」を目指すと謳った国の最終評価が公表される。果たして健康格差の縮小はできたのか? 10月9日に紹介したい。