藤森 花:みんなの力が命をつなぐ

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みんなの力が命をつなぐ

〜高校卒業後、群馬県の専門学校で救急救命士の資格を取得。前橋市消防局に入職し、救急隊として現場で4年間活動。現在、警防課にてさまざまな救急事務を担当している〜 消防士となり7年目、救急隊としてさまざまな現場をみてきました。10人の傷病者がいれば、10通りの現場があります。悲惨な現場もあれば、命の誕生を見る瞬間もありました。しかし、どんな現場にも共通しているのは「人を救いたい」という気持ちです。 私たちが頑張っても救えない命はたくさんあります。だからこそ皆さんの力を借りたいのです。救急車到着までの間に心肺蘇生を行うことで、救命率は格段に上がります。それを知ってほしい。 市民の方々が安心安全に暮らせる街をめざし、日々、救命講習の普及活動に尽力しています。みんなで命をつなぎたい、一人でも多くの人を救いたい、そんな気持ちを胸に!

藤森  花 Hana FUJIMORI

前橋市消防局 救急救命士

みんなの力が命をつなぐ

[進行]続きましてセッションA最後のプレゼンターは、前橋市消防局救急救命士・藤森花さんにご登壇いただきます。タイトルは「みんなの力が命をつなぐ」ということでプレゼンしていただきます。藤森さん、ご登壇ください。

 いま、ご紹介に与りました、前橋市消防局の藤森と申します。よろしくお願いします。今日はですね、皆さんに命の大切さ、そして命をどうやってつないでいくか。また、いま前橋市消防局で推進しているプッシュコースについてお話しさせていただきたいと思います。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
 これはおそらく皆さんが家族と日常的に交わしている会話だと思います。これが交わせることを当たり前だと思っていませんか?
 この会話が最後で、もう大切な人は帰ってこない。これを考えたことありますか?…想像できますか?
 「心臓突然死」、健康で特に持病もない。そんな人の心臓が突然痙攣を起こしてそのまま帰らぬ人になってしまう。そんな人が年間7万人もいるんです。
 心臓突然死は自宅での発症がほとんどですが、職場・学校・商業施設・ゴルフ場…様々な場所で起こりえます。このことから、いつでもどこでも誰にでも起こる可能性があるのです。では、この中の「学校」に焦点を当てて見ていきましょう。
 おそらく皆さん学校は安全というイメージがあるかと思います。ほとんどの学校はAEDが設置されていて、常に先生が一緒にいるため、目が行き届いている。また、先生のほとんどが毎年のように応急手当講習を受けています。しかし実際の学校では、全国の学校で50人もの人が亡くなっています。
 2004年以降に一般市民にAEDの使用が認められてからはだんだん少なくなってきていますが、まだまだ50人もいます。
 学校で起こる心臓突然死の多くは体育館であったりプールで起こることがほとんどですが、運動中が65%と半数以上です。
 こちら、小中学校を対象としたある論文によると、心肺停止の97%はほとんど誰かが目撃していて、87%が運動中と報告されています。また、そのうちの84%の人に胸骨圧迫心肺蘇生がされているとのことでした。
 ではそのうちのどのくらいの人にAEDが使われたでしょうか。みなさん、どのくらいの人だと思いますか?
 実際は38%。誰かが見ている、AEDが近くにある…それなのに、半分にも満たない人にしかAEDは使われていないんです。では、そもそもAEDとはなんでしょうか?
 AEDとは、不規則な運動をしている心臓…いわゆる痙攣をしている心臓に電気ショックを与えて、正常な動きに戻してあげる機械です。心室細動…いわゆる心臓の痙攣。この不規則な動きを正しい動きに戻してあげられる唯一の機械がAEDなんです。誰でも簡単に、安心して使用することができる機会です。
 では、学校での心肺停止の内容を見てみましょう。先ほども話の中で、学校で誰かが見ていた心肺停止は97%という話をしました。その中でAEDが必要であった心室細動…いわゆる心臓の痙攣。それが原因だった人は、なんと94%。ほとんどでした。これから、実際にあった事例をお話しします。
(スライドを参照しながら)こちらの写真の女の子、名前はあすかちゃんです。学校の駅伝大会の練習中に突然倒れてしまいました。周りにはたくさんの先生がいました。近くにAEDもありました。しかし誰もあすかちゃんの心臓が止まっていることに気づかなかった。AEDが使われなかった。もし、誰かが心臓が止まっていることに気づいていたら、もしAEDが使われていたら…あすかちゃんはどうなっていたでしょうか。では、なぜこんなにもすごくいい機械なのに使われないんでしょうか。
 それは、まだ皆さんがAEDについてあまり知識がないために、危険な機械だと思ってしまっていること、もう一つは、心臓が止まった直後に見られる口をパクパクとした呼吸「死戦期呼吸」、これを呼吸していると思ってしまうなどの理由が考えられます。
 実際には胸骨圧迫をすると助かる確率が2倍、AEDによる電気ショックを行うことで助かる確率が2倍、あわせて4倍もの人の命が助かるのです。だからこそ皆さんには正しい知識を知ってほしい、身につけてほしいんです。
 そのため前橋市消防局では、小中学校へのPUSHコースを推進しています。皆さんPUSHコースご存知ですか? 聞いたことありますか? これはですね、心肺蘇生の中で最も重要な胸骨圧迫とAEDの使い方に特化していて、短時間で命の大切さを学ぶことができるコースです。大体45分から50分で行えるため、学校の授業内で開催が可能です。
 こちらの(実物を取り出しながら) 人の絵が書いてあるレジャーシート、こちらの音が鳴るピンクのハート、それからAEDのパッドを貼る位置を示してある2枚のカード。 この簡易的で子供でも分かりやすいトレーニング機材を一人一人使って行います。
 会場の広ささえあれば人数制限はありません。また専用のDVDの中で可愛いキャラクターが分かりやすく教えてくれます。PUSHコースのインストラクターが講習を行うため、先生の参加の必要はなく、費用は一切かかりません。実際の死戦期呼吸の動画も見ることができるため、分かりやすく判断に迷ったときは胸骨圧迫を行いましょぅと強調しています。
 一般市民の方にとって心肺蘇生法は難しく複雑な手順で忘れてしまう。しかしこのPUSHコースは簡単でシンプルな心肺蘇生コースのため心肺蘇生法のなかで最も重要な胸骨圧迫とAEDの使用のみを伝えて、怖くても駆けつける勇気で救える命があるということを訴えています。
 このコースを受講していただく上での到達目標としてまず1つ目に、心臓が止まった人に対してすぐにAEDを使う環境を作ること、2つ目、一度心肺停止となってしまった人が再び元気に社会に戻る確率を上げること、3つ目、市内すべての学校で心肺蘇生法講習を行って、幼少期から命の大切さについて学んでもらうこと。
 これら3つの目標を達成して毎日3人の命を救う、市内すべての学校で講習を行うことが最終的な目標です。
(スライドを参照しながら)こちらが実際に行われているPUSHコースの開催風景になります。小学校でPUSHコースを受けることにより、命の大切さ、人を助けることを意識づけることができます。そのあとに、中学校で再び講習を受けます。そのあと、運転免許を取得するときにまた受講する。これらの段階を踏んでいくことで、心肺蘇生の知識と技術が継続され続けていく。これによって応急手当の実施率が増加して、助けられる命が増えることにつながります。
 私はこのPUSHコースを通して救える命を救いたい。大切な人の命を守りたい。市民の日常を守りたい。
「おかえりなさい」、「ただいま」
 皆さんの大切な人との当たり前の会話を守っていきたい。そのためには皆さんの力が必要です。皆さんで守っていきましょう。
 ご清聴ありがとうございました。
(拍手)

テキスト化 「ろくや」さん

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